神経科学:これがシロシビンを飲んだあなたの脳だ
Nature
2024年7月18日
マジックマッシュルームに含まれるサイケデリック化合物であるシロシビンは、人間の脳活動を数週間にわたって阻害することを報告する論文が、Natureに掲載される。この発見は、サイケデリック化合物が人間の脳活動に及ぼす影響に関する理解を深め、その治療の可能性を解き明かすのに役立つかもしれない。
シロシビンは、人の空間や時間の認識、「自己」の感覚をゆがめることで知られている。シロシビンはまた、うつ病、依存症、不安症において、迅速かつ持続的な症状の緩和をもたらすことができる。しかし、サイケデリック化合物の主体的かつ長期的な効果の神経的な相関は、依然として不明である。
Joshua Siegelらは、無作為化比較試験において、高用量(25 mg)のシロシビンの服用前、服用中、および服用後3週間経過した、健康な成人7人(18–45歳)の脳の変化をMRIスキャンで追跡した。また、これらの成人は、6–12ヵ月後にシロシビンの追加投与を受けた。著者らは、シロシビンが皮質と皮質下における機能的結合を阻害することを発見した。これらの変化は、脳の異なる領域の非同期化によって引き起こされた。シロシビンによる変化は、デフォルト・モード・ネットワークで最も強く、このネットワークは、海馬前部と呼ばれる領域とつながっており、空間、時間、自己の感覚の形成に関与している。シロシビンは、海馬前部とデフォルト・モード・ネットワーク間の機能的結合を持続的に減少させ、それは数週間続いた。さらに、単純なオーディオビジュアルマッチングの課題を完了すると、脳に対するシロシビンの効果が減少することがわかった。
同時掲載されるNews & ViewsにPetros Petridisは、次のように記している。「Siegelらは、急性サイケデリック状態の根底に非同期的な脳活動があり、自己意識、感情、人生の物語をつかさどる脳領域の神経活動に持続的な変化をもたらす可能性があるという説得力のある証拠を示している」。さらに、Petridisは、次のように付け加えている、「このことは、シロシビンが脳をより柔軟にする可能性を示唆しており、硬直した不適応な思考や行動パターンに苦しむ人々にとって有益である可能性を示唆している」。シロシビンが抗うつ薬として、あるいは他の精神疾患の治療薬として有用かどうかを検証するためには、うつ病患者を対象とした更なる研究が必要である。
Siegel, J.S., Subramanian, S., Perry, D. et al. Psilocybin desynchronizes the human brain. Nature (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07624-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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