素粒子物理学:最高エネルギーのニュートリノが話題を呼ぶ
Nature
2025年2月13日
これまでに検出された宇宙ニュートリノの中で最もエネルギーの高いものの証拠を報告する論文が、今週のNature に掲載される。そのエネルギーは、これまでに検出されたニュートリノの約30倍であると推定されている。KM3NeT Collaboration(コラボレーション)が報告したこの結果は、その正確な起源はまだ特定されていないものの、その粒子が私たちの銀河系を超えたところから来たことを示唆している。
ニュートリノは、陽子や中性子などの物質の素粒子と相互作用する頻度が極めて低い素粒子である。そのため、宇宙ニュートリノの検出は難しく、氷や水などの透明な物質の大きな塊の中に埋め込まれた何千もの高感度「カメラ」を使用する必要がある。高エネルギーニュートリノが検出器の近くで相互作用を起こすと、電荷粒子が生成され、光放射が放出される。Cubic Kilometer size Neutrino Telescope(KM3NeT;立方キロメートル・ニュートリノ望遠鏡)は、イタリアのシチリア島とフランスのプロヴァンスに近い地中海の水深3,450メートルと2,450メートルの地点に、このような信号を探索する2つの検出器、ARCA(Astroparticle Research with Cosmics in the Abyss)とORCA(Oscillation Research with Cosmics in the Abyss)を設置している。
KM3NeTコラボレーションは、建設中の望遠鏡からデータを分析した。2023年2月13日、ARCA 検出器が高エネルギーミュー粒子(muon)の信号を観測した。研究者らは、その粒子のエネルギーは約 120 ペタ電子ボルト(PeV、1 PeV は 1000兆電子ボルト)であったと推定している。著者らは、このミュー粒子を生成したニュートリノはさらに高いエネルギー、約220ペタ電子ボルト(1ペタ電子ボルトは1000兆電子ボルト)であったと提案している。検出器の深さとミュー粒子のほぼ水平方向を考慮すると、ニュートリノは宇宙起源である可能性が高いと研究者らは結論づけている。
著者らは、ニュートリノが飛来したと推定される方向と一致する12個の潜在的なブレーザー(活動銀河の明るい中心核)を特定した。しかし、そのうちのどれもがニュートリノの天体物理学的な発生源であるとはっきり特定できるものではない。著者らは、このニュートリノが宇宙線と宇宙マイクロ波背景放射の光子の相互作用によって生じる「宇宙起源の(cosmogenic)」ニュートリノである可能性も示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 12 February 2025
The KM3NeT Collaboration. Observation of an ultra-high-energy cosmic neutrino with KM3NeT. Nature 638, 376–382 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08543-1
doi:10.1038/s41586-024-08543-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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