環境:19世紀後半以降、地中海地域の降水量はほぼ安定している
Nature
2025年3月13日
1871年から2020年までの歴史的傾向の分析によると、地中海地域における降水量は、年や数十年単位での変動はあるものの、全体的には安定していることが分かった。この研究結果は、27か国2万3000か所の観測所からのデータに基づいており、Nature に掲載される。この結果は、この地域の社会、経済、および環境政策にとって重要な意味を持つ。
地中海地域は、年間を通じて降水量の分布が不均一であるという特徴がある。気候変動の予測や観測研究では、21世紀中にこの地域全体で降水量が減少する可能性が示唆されている。しかし、他の研究では、降水量の変化は大気循環パターンによって引き起こされ、長期的には安定性が維持されると提案されている。
フランス、イタリア、モロッコ、エジプト、およびギリシャなど27か国にわたる23,000の降水量観測所からのデータを使用し、Sergio Vicente-Serranoらは、1871年から2020年までの期間を網羅するデータセットを作成し、長期間にわたる年間および季節ごとの降水量の傾向を調査することが可能となった。また、著者らはこのデータセットを、結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP:Coupled Model Intercomparison Project)5および6のモデリングと比較した。その結果、この期間における地中海地域の降水量は概ね安定しているものの、空間的に大きなばらつきがあり、数十年単位や季節ごとの違いも見られることが分かった。 著者らは、一部の地域や期間では傾向が認められるものの、これは大気力学によるもので、内部変動と関連している可能性があると指摘している。また、著者らのデータセットは、過去の降水量に関するCMIP 6のモデリングによる観測結果と一致しており、いずれもこの地域における過去の降水量の傾向を示すものではないと述べている。
この期間にわたる降水量傾向がほとんど認められなかったとしても、地中海地域が気温上昇に起因する大気の蒸発需要の増加により、気候の乾燥化が進行中であることを著者らは指摘している。著者らは、この調査結果は、この地域の環境、農業、水資源計画にとって重要な意味を持つと結論づけている。
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- Published: 12 March 2025
Vicente-Serrano, S.M., Tramblay, Y., Reig, F. et al. High temporal variability not trend dominates Mediterranean precipitation. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08576-6
doi:10.1038/s41586-024-08576-6
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