Nature ハイライト
神経変性:αシヌクレイン株の特定による診断
Nature 578, 7794
シヌクレイノパチーは、αシヌクレインというタンパク質のミスフォールディング(誤った折りたたみ)や凝集を特徴とする神経変性疾患の総称である。異なる疾患で見られる凝集体は、コンホメーションの異なる別個のαシヌクレイン株に相当し、これらの株は、正常なαシヌクレインを変化させて、細胞から細胞へと伝播できると考えられている。パーキンソン病と多系統萎縮症はそれぞれ予後が異なり、別々の治療を必要とするシヌクレイノパチーだが、臨床では見分けるのが難しい。今回C SotoとM Shahnawazたちは、タンパク質ミスフォールディング循環増幅(PMCA;protein misfolding cyclic amplification)技術を用いて、患者の脳脊髄液中に見られる少量のαシヌクレインを増幅し、解析を行った。その結果、αシヌクレイン凝集体の特徴によって、パーキンソン病と多系統萎縮症の患者とを高い感度と特異性で識別することができた。さらに、患者の脳脊髄液中の凝集体は、脳内の凝集体の状態を正しく反映していることも分かった。このように、臨床的に異なるシヌクレイノパチーでは、αシヌクレイン凝集体が、異なる生化学的・構造的性質を持つ別個のコンホメーション株として存在していると考えられる。
2020年2月13日号の Nature ハイライト
量子光学:大都市スケールの光ファイバーを通した量子エンタングルメント
材料科学:乱れているがランダムではない
医学研究:正常な上皮での喫煙に誘発される変異生成の動態
神経変性:αシヌクレイン株の特定による診断
生理学:プレキシンD1の二面性
細胞生物学:細胞の品質管理における相分離
細胞生物学:相分離がオートファジーの開始を仲介する
分子生物学:piRNAの2つのプロセシング経路
構造生物学:マラリアでの糖輸送