Nature ハイライト
構造生物学:マラリアでの糖輸送
Nature 578, 7794
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は、感染した宿主からの糖の取り込みに依存していて、取り込みにはグルコース輸送体PfHT1が使われている。今回D Drewたちは、グルコースと複合体を形成したPfHT1の構造を報告している。この複合体は、これまで観察されたことがない閉じた構造をとっているが、糖結合部位を遺伝学的に改変しても輸送体の複数種の糖と結合できる性質には影響がなく、マラリア原虫はグルコースとは別のエネルギー源を使って生き残ることができた。実際に、この結合部位から遠く離れた所にある残基が、糖の輸送と選択性に重要であることが明らかになった。さらに行われた機能研究と共に、今回の研究はゲート開閉に関わるヘリックスとの重要なアロステリック共役の存在を明らかにしている。また、この結果は、直接的な結合ではなく、動力学的性質が輸送と選択性に重要な役割を持つことを示しており、これが輸送体が基質を「選ぶ」際のより広く使われている機構である可能性を示唆している。
2020年2月13日号の Nature ハイライト
量子光学:大都市スケールの光ファイバーを通した量子エンタングルメント
材料科学:乱れているがランダムではない
医学研究:正常な上皮での喫煙に誘発される変異生成の動態
神経変性:αシヌクレイン株の特定による診断
生理学:プレキシンD1の二面性
細胞生物学:細胞の品質管理における相分離
細胞生物学:相分離がオートファジーの開始を仲介する
分子生物学:piRNAの2つのプロセシング経路
構造生物学:マラリアでの糖輸送