Nature ハイライト

宇宙:岩石に刻まれた火星の気候史

Nature 438, 7068

火星には当初、液体の水が存在したということは、現在ほとんどの研究者が認めている。F Pouletたちは、火星表面の粘土質岩石の探査機による観測を行って、初期の湿潤な気候がどのように進化したかを、今回さらに詳しく描き出した。  この観測結果は、ヨーロッパ宇宙機関のマーズエクスプレス探査機に搭載された分光計OMEGAを使って行われたもので、この探査機は2003年末、火星の周回軌道に投入されている。Pouletたちは、OMEGAにより火星表面をスキャンし、層状ケイ酸塩などの特定の種類の鉱物の存在証拠となる赤外反射光を探査した。このような岩石は、火山岩である玄武岩が水に出会ったときに形成されるので、火星表面にそれらが存在すれば、かつてそこにかなりの量の水があったことになる。  OMEGAは、層状ケイ酸鉱物の堆積物を複数検出した。これらはすべて、35億年から38億年前に終わった、ノアキス紀と呼ばれる火星で最初期の地質時代区分にまでさかのぼる年代の地域で見つかっている(火星は約46億年前、地球と同時期に形成された)。Pouletたちは、これらの粘土鉱物が形成された状態は、もっと後の比較的温暖でおそらくより乾燥していた時期とは多分異なるだろうと考えている。このより乾燥した時期には、OMEGAが他の場所で発見した硫酸塩鉱物が形成された。この時期の火星は、火山から噴出した酸性ガスのため、ノアキス紀よりも酸性の環境であったと思われる。

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