Cover Story:特集:2021年を振り返る:今年の重要人物10人
Nature 600, 7890
2021年も幕が下りようとしている。過去12か月を振り返り、今年も「Natureが選んだ10人の科学者」が発表された。この1年に科学の発展に貢献した人々である。昨年と同様、今年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するニュースが科学ニュースの多くを占め、10人のうち4人がこのパンデミックに関連する人々で、現在急速に広がりつつある重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン株の出現に警告を発した、南アフリカのKwaZulu-Natal Research Innovation and Sequencing Platformの所長Tulio de Oliveira、COVID-19ワクチンのより公平な分配の要請を無視した富裕国と製薬会社への批判を主導した国連合同エイズ計画(UNAIDS)の事務局長Winnie Byanyima、COVID-19に関する科学報告書をかみ砕いてソーシャルメディアに投稿し、重要な情報を広めた英国保健安全保障省の疫学者Meaghan Kall、物議をかもしたCOVID-19ワクチンのブースター接種の決定やアルツハイマー病治療薬の承認などのさなか米国食品医薬品局(FDA)を率いたJanet Woodcockが選ばれた。また、気候変動も重要なテーマで、特定の異常気象に対する人為起源の気候変動の役割を評価した英国ロンドン大学インペリアルカレッジの気候科学者Friederike Ottoと、生物多様性の保護や地球温暖化の防止における先住民族の重要性の認識を大きく進めるのに貢献した、先住民族の権利に関する元国連特別報告者Victoria Tauli-Corpuzの2人が選ばれた。さらに、米国以外で初めて火星にローバーを着陸させるという歴史的偉業を成し遂げた中国国家航天局の総設計師Zhang Rongqiao、より倫理的な人工知能(AI)システム開発法を調べる研究所を立ち上げたAI研究者Timnit Gebru、ソフトウエアが生成する無意味なテキストを含む数千もの不正な科学出版物を暴き出したコンピューター科学者Guillaume Cabanac、驚くほど正確にタンパク質構造を予測するAlphaFoldを公表し、構造生物学の分野を震撼させたディープマインド社のAI研究者John Jumperが選ばれた。表紙は、陸、海、空において、微生物から最大級の哺乳類まで、地球上の生命が相互に関連する様子を描いたものである。地球の脆弱性は、生物多様性の保護や気候変動の最悪の影響の回避を目的に世界中で交渉が行われた今年の大きなテーマだった。
2021年12月23日号の Nature ハイライト
量子物理学:量子物理学における複素数の役割
原子物理学:原子同士の相互作用の仕方を再考する
フォトニクス:集積フォトニクスを用いた自由電子の波動関数の整形
材料科学:孤立しても「デッド」にならない
遺伝学:多様な祖先系集団の160万人以上における血中脂質レベルに関連する遺伝的座位
細胞生物学:硬さの勾配
社会学:調査は量より質
医学研究:腸のマイクロバイオームによって禁煙と体重増加が結び付けられた
細胞生物学:新規ホルモンFABP4は代謝性疾患において脂肪と膵臓のクロストークを仲介する
医学研究:胃がんに対する免疫療法の併用
分子生物学:複製終了した複合体の除去