Nature ハイライト

細胞生物学:硬さの勾配

Nature 600, 7890

通常の発生から創傷治癒、がん細胞の浸潤まで、多くの過程は細胞の集団的な移動に依存している。しかし、細胞はどちらに進むべきかをどのように知るのか。ほとんどの場合、細胞は化学物質の濃度勾配に沿って進むべき道を嗅ぎ分ける。一方で、細胞は移動する環境の硬さ勾配にも沿って移動する可能性が考えられており、この移動様式は「走硬性(durotaxis)」として知られる。A ShellardとR Mayorは今回、走硬性と走化性の両方が神経堤細胞の移動に関与していることを示している。神経堤は胚の細胞集団で、脊椎動物では、頭部、顔、皮膚などの複数の器官や組織の形成に不可欠であり、その移動行動はがんの浸潤に類似するとされている。著者たちは、神経堤に隣接する組織塊であり、後に眼や耳などの器官になる頭蓋プラコードにおいて、硬さの勾配を特定した。この勾配は、走硬性によって、離れていく基層の硬い領域を追い続ける神経堤と共に移動する。この硬さ勾配は、神経堤とプラコードとのN-カドヘリンを介した相互作用により、神経堤細胞自体によって誘導される。従って、細胞の移動は、走化性と走硬性の相互作用によって支配されている。

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