Nature ハイライト
細胞生物学:硬さの勾配
Nature 600, 7890
通常の発生から創傷治癒、がん細胞の浸潤まで、多くの過程は細胞の集団的な移動に依存している。しかし、細胞はどちらに進むべきかをどのように知るのか。ほとんどの場合、細胞は化学物質の濃度勾配に沿って進むべき道を嗅ぎ分ける。一方で、細胞は移動する環境の硬さ勾配にも沿って移動する可能性が考えられており、この移動様式は「走硬性(durotaxis)」として知られる。A ShellardとR Mayorは今回、走硬性と走化性の両方が神経堤細胞の移動に関与していることを示している。神経堤は胚の細胞集団で、脊椎動物では、頭部、顔、皮膚などの複数の器官や組織の形成に不可欠であり、その移動行動はがんの浸潤に類似するとされている。著者たちは、神経堤に隣接する組織塊であり、後に眼や耳などの器官になる頭蓋プラコードにおいて、硬さの勾配を特定した。この勾配は、走硬性によって、離れていく基層の硬い領域を追い続ける神経堤と共に移動する。この硬さ勾配は、神経堤とプラコードとのN-カドヘリンを介した相互作用により、神経堤細胞自体によって誘導される。従って、細胞の移動は、走化性と走硬性の相互作用によって支配されている。
2021年12月23日号の Nature ハイライト
量子物理学:量子物理学における複素数の役割
原子物理学:原子同士の相互作用の仕方を再考する
フォトニクス:集積フォトニクスを用いた自由電子の波動関数の整形
材料科学:孤立しても「デッド」にならない
遺伝学:多様な祖先系集団の160万人以上における血中脂質レベルに関連する遺伝的座位
細胞生物学:硬さの勾配
社会学:調査は量より質
医学研究:腸のマイクロバイオームによって禁煙と体重増加が結び付けられた
細胞生物学:新規ホルモンFABP4は代謝性疾患において脂肪と膵臓のクロストークを仲介する
医学研究:胃がんに対する免疫療法の併用
分子生物学:複製終了した複合体の除去