Nature ハイライト
Cover Story:高忠実度:量子計算のための誤り訂正の重要なしきい値をシリコンキュービットが超えた
Nature 601, 7893
表紙は、シリコン量子コンピューターの構成要素であるスピンキュービットの想像図である。2つの赤い球が原子核で、それに伴う電子の波動関数(楕円)がそれらを取り囲んでいる。4つの「ローブ」は、キュービット間のエンタングルメントを表している。今回3報の論文が、マルチキュービット・エンタングルメントを用いたシリコン系量子コンピューター・プラットフォームについて独立して報告している。A Morelloたちの論文では、シリコンに埋め込まれた原子(表紙)が用いられており、他の2つの論文では、L Vandersypenたちと野入亮人(理化学研究所)たちが、量子ドット中の電子を扱っている。重要なのは、3報の全てで99%を超える忠実度が達成されていることだ。これは、100回の演算で生じる誤りが1回未満であることを意味し、シリコンキュービットを用いた量子コンピューターを実現可能なものにし得る、誤り訂正の重要なしきい値である。今回の結果によって、新たな量子デバイスに長い歴史を持つ製造技術を用いる準備ができたのかもしれない。
2022年1月20日号の Nature ハイライト
天文学:ブラックホールが誘発した星形成
天文学:局所バブルの膨張が促した太陽近傍の星形成
光物理学:非エルミートなフロケ準結晶に見つかった三重相転移
材料科学:無機–有機ハイブリッド材料の構造決定
化学生物学:ナノ粒子のキラリティーが免疫応答に及ぼす影響
気候科学:21世紀末にはスバールバル諸島の質量損失が2倍になる
環境化学:COVID-19ロックダウン期間中に減少したNO2濃度
考古学:ニューファンドランド島にバイキングが居住していた年代
考古学:バイキングは略奪ではなく交易によって拡大した
神経科学:ヒト皮質ニューロンの発生系譜
神経科学:ニューロンが多様性を獲得するタイミング
コロナウイルス:第2世代COVID-19 mRNAワクチンの有効性
免疫学:炎症部位での免疫細胞の挙動の全体像
ヒトの発生:妊娠評価のためのリキッドバイオプシー
がん:バリンtRNAの脱調節による白血病の抑制
がん:クロマチン因子の標的化による腫瘍増殖阻害
分子生物学:レトロエレメントに対するゲノム防御機構
分子生物学:マイクロRNAを選別する
創薬:110億個を超える化合物を調べる方法
構造生物学:分子シャペロンがクライアントタンパク質の構造を整える仕組み