Nature ハイライト
構造生物学:分子シャペロンがクライアントタンパク質の構造を整える仕組み
Nature 601, 7893
分子シャペロンであるHsp90とHsp70は一緒に機能して、多くの細胞タンパク質の折りたたみ、リモデリング、成熟を促進する。このような「クライアント(基質)」タンパク質の1つにグルココルチコイド受容体(GR)がある。GRに対するシャペロンの作用(シャペロニング)は、Hsp70による不活性化、GR–Hsp90–Hsp70を含む不活性な「積み込み」複合体の形成、活性を持つGR–Hsp90–p23「成熟」複合体への変換、その後のGRの放出というサイクルで起こる。今回D Agardたちの2つの論文では、クライオ電子顕微鏡を使って、クライアントタンパク質のシャペロンに依存したリモデリングの分子機構が、原子レベルの分解能で初めて完全に解明されている。1つ目の論文では、GR積み込み複合体の一部としてのHsp90/Hsp70の直接的な協調の分子基盤を示し、2つ目の論文では、GR成熟複合体の構造が詳しく述べられ、Hsp90がどのようにしてクライアント特異的な折りたたみ構造を指示するかが明らかにされている。
2022年1月20日号の Nature ハイライト
天文学:ブラックホールが誘発した星形成
天文学:局所バブルの膨張が促した太陽近傍の星形成
光物理学:非エルミートなフロケ準結晶に見つかった三重相転移
材料科学:無機–有機ハイブリッド材料の構造決定
化学生物学:ナノ粒子のキラリティーが免疫応答に及ぼす影響
気候科学:21世紀末にはスバールバル諸島の質量損失が2倍になる
環境化学:COVID-19ロックダウン期間中に減少したNO2濃度
考古学:ニューファンドランド島にバイキングが居住していた年代
考古学:バイキングは略奪ではなく交易によって拡大した
神経科学:ヒト皮質ニューロンの発生系譜
神経科学:ニューロンが多様性を獲得するタイミング
コロナウイルス:第2世代COVID-19 mRNAワクチンの有効性
免疫学:炎症部位での免疫細胞の挙動の全体像
ヒトの発生:妊娠評価のためのリキッドバイオプシー
がん:バリンtRNAの脱調節による白血病の抑制
がん:クロマチン因子の標的化による腫瘍増殖阻害
分子生物学:レトロエレメントに対するゲノム防御機構
分子生物学:マイクロRNAを選別する
創薬:110億個を超える化合物を調べる方法
構造生物学:分子シャペロンがクライアントタンパク質の構造を整える仕組み