ある刺激が「よい」刺激か「悪い」刺激かを判断する役割をそれぞれ別々に担っている神経細胞群がサルの脳にあることを、研究者たちが発見した。これらの細胞は、脳が特定の画像が好ましいか、好ましくないかを学習して適切な応答をできるようにする経路の一部として機能しているらしい。 D Salzmanたちはまず、アカゲザル(Macaca mulatta)にいろいろな画像を見せ、その後、おいしい飲み物を与えるか、顔に空気を吹きつけて不快な思いをさせて、特定の視覚刺激を「よい」あるいは「悪い」と感じるように訓練した。そしてこの課題をやらせながら、感情の処理にかかわることが知られている扁桃体という脳領域のニューロンの働きを調べた。 次にSalzmanたちは、それまでの「よい」刺激が不快な結果を、逆に「悪い」刺激がよい結果をもたらすように入れ替えをした。すると、サルが新しい関係をのみこむにつれて扁桃体ニューロンの活動が変化して、「よい」ニューロンは新しい「よい」刺激のほうに反応し、活性化されるようになった。この結果から考えると、視覚刺激の「よい」「悪い」を知らせるニューロンの存在が、周囲の環境にどのように応答すべきかを学習する過程の基盤になっているのかもしれない。