N Gedneyたちの新しい研究によると、大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度上昇が原因となって起こった植物の水利用の変化が、地球上の河川流出量を増加させているらしい。 人間による水の消費量が増加しているにもかかわらず、20世紀を通じて、大陸規模での河川流出量はおおむね増加傾向にあった。今回の研究でGedneyたちは、機械論的陸面モデルと統計学的な「フィンガープリント法」を用いて、観測された流出量の増加をもたらすと思われる要因について調べた。その結果、CO2濃度の上昇によって起こる気孔の閉鎖によって植物からの蒸散量が減少し、これが流出量の増加傾向に大きな影響を及ぼしていることがわかった。植物からの蒸散量(いわば植物の汗にあたる)が少なくなれば、土壌からの水分の吸収量も減少する。Gedneyたちは、CO2濃度が将来上昇すると、植物の水を使う量が減り、人間が利用可能な淡水の量が増えると同時に、洪水の危険性も大きくなる可能性があると結論している。 これまで、将来の水資源に関する予測では蒸散量の影響は無視されてきた。実験では、CO2濃度が上昇すると、多くの植物種で気孔の開孔度が低下することがわかっているが、このことが地球規模での水循環に何らかの影響を与えるかどうかははっきりしていなかった。今回の解析から、CO2濃度の上昇によって、陸地表面での水収支が既に影響を受けている可能性が考えられる。News and ViewsでD Matthewsは、この発見について、「人間活動が地球規模の気候システムに与える複雑多岐にわたる影響を解明するうえでの重要な一歩だ」と述べている。