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流体力学:かき混ぜても元に戻せる液体

Nature 438, 7070

コーヒーにクリームを入れてかき混ぜてしまったら、もう元に戻すことはできない。しかし一部の流体混合過程は、反対方向にかき混ぜることによって逆戻りさせることができる。今週号には、この可逆的な挙動を支配する鍵となる諸要因についての報告が掲載されている。  D Pineたちは、2つの同心円筒の間に閉じ込められた粘性流体に懸濁させた微小高分子ビーズの動きを調べた。この円筒は、2.5ミリメートルだけ離れるようにしてあり、互いに相対的に回転できる。低濃度のビーズを少し撹拌した場合、混合は可逆的となり得るのでビーズは最初の位置に戻るとPineたちは実験に基づいて予測している。ビーズが高濃度、もしくはもっと長く撹拌した場合には、混合は不可逆的になる。  この不可逆的な挙動の出現は個々のビーズ間の衝突に起因する、とPineたちは述べている。もし、撹拌中に粒子が互いに衝突しなければ、混合過程は逆戻りさせることができる。しかし、それぞれのビーズが1回以上衝突すれば混合は不可逆的となる。  T Shinbrotは「これらの結果は、薬剤懸濁液の製法をはじめとする多くの実用上の問題を解明する」とNews and Viewsで述べており、また混合プロセスは実験室レベルから生産プラントへの規模拡大が困難だが、これは混合の際の挙動変化が予測できないからだと説明している。懸濁粒子間の衝突の影響が解明されれば、この問題の新たな解決法が浮上するかもしれない。

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