Nature ハイライト 地球:川が逆流したとき 2005年12月15日 Nature 438, 7070 パキスタンにおける主要な河川であるインダス川は、すべての人類文明の中で最も古いものの1つに水を与えた。そしてインドという名称は、この川の名前によるものである。ところが、P CliftとJ Blusztajnによると、かつてのインダス川は今日とは異なる水源から水を得ていたらしい。 インダス川は、パキスタンのカラコラム山岳域に源を発している。しかし、インダス川の水の多くは、チベットのヒマラヤ山脈西部からパンジャブ地方を貫いて流れ、パキスタン中央部でインダス川と合流する4つの大河によって運ばれている。しかし、これは比較的新しい状況である。CliftとBlusztajnは、過去3000万年にわたってインダス川によってアラビア海に運ばれ、現在は海底に堆積岩として沈積している堆積物の厚さと化学組成を調べて、約500万年前に堆積物の供給源が変わったらしいことを見いだした。それ以前の堆積物はカラコラム山脈の特徴を持つように見えるが、その後はヒマラヤ山脈西部起源の物質の特徴が残されているのである。 CliftとBlusztajnは、それまで東流してガンジス流域に流れ込んでいたパンジャブ地方の河川をインダス流域が「分捕った」ためにこの変化が生じたと結論している。この流路変更は、プレートテクトニクス運動によってパンジャブ地方の河川が西方に傾いたために引き起こされた可能性がある、と著者たちは考えている。 2005年12月15日号の Nature ハイライト 宇宙:継続時間の短いバーストは星の合体で生じる 流体力学:かき混ぜても元に戻せる液体 神経生物学:とても痛い発見 細胞:幹細胞の並び方で羽毛の形が決まる 地球:川が逆流したとき 生化学: 目次へ戻る