Nature ハイライト

量子情報:2個の光子と半導体チップ

Nature 439, 7073

簡単な半導体電子デバイスを使って量子もつれ光子対を発生させる方法が報告された。このような半導体チップを使った量子もつれ光子(光の粒子)源は、量子情報技術にとって極めて有用と思われる。  量子もつれと呼ぶ量子力学効果から生じる相互依存な性質を持つ1対の光子は、量子を用いる情報処理の基本単位、いわば「基本通貨」となる。量子もつれ光子対は、例えば、量子暗号技術に使うことができる。これは、情報を伝送する極めて安全な方法だ。また、原理的には現在の従来型デバイスより非常に高いコンピューター性能が得られる量子コンピューティングにも使える。しかし、オンデマンドに量子もつれ光子を作るのは簡単ではない。  今回、A Shieldsたちは、半導体発光デバイスでよく使われる材料の1つ、インジウム砒素半導体からできた量子ドットと呼ばれる小さい構造から、量子もつれ光子が放出されたと考えられる結果を報告している。量子ドットは、その電子がレーザー光によってより高いエネルギー状態になってから、余分なエネルギーを光として解放するときに光子対を放出する。Shields たちは磁場を使って、光子が放出される条件を微調整し、その偏光が量子もつれ状態にあると見なせる光子対を発生させることに成功した。つまり、この光子対では、対の一方の偏光面がもう一方の偏光面に依存するため、対の片方で測定を行えば他方の偏光を決定できるのである。このプロセスをもっと厳密に制御できれば、簡単な半導体発光ダイオードを、小型かつ堅牢で信頼性の高い量子もつれ光子対源として使えるかもしれない。

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