成体マウスの精巣から胚性幹(ES)細胞と同様な性質を示す幹細胞が単離された。このような細胞は簡単な睾丸生検でヒト男性からも得られると考えられるので、患者に遺伝的に適合する治療用細胞を増殖させる際の、ES細胞に代わる幹細胞供給源になるかもしれない。この方法ならば、ヒト胚からの幹細胞作成に伴う技術的・倫理的問題を回避できる可能性がある。 新生マウスの精巣にES細胞と同じようにさまざまな種類の組織へ分化する能力をもつ細胞が存在することは既にわかっていたが、このような細胞が成体になっても維持されているかどうかは不明だった。 G Hasenfussたちは、マウス成体の精巣から精子を作る幹細胞を単離して、特定の培養条件下ではこれらの細胞の一部がES細胞に非常によく似たコロニーを作ることを明らかにし、これを多能性成体生殖系列幹細胞(maGSC)と名づけた。胚へ注入されたmaGSCはES細胞と同じく自発的に胚の3種類の基本的な組織層へと分化し、複数の臓器へと発生していく。