Nature ハイライト

Cover Story:移動のパターン:人間の動きにみられる法則/採餌の際のレヴィ・フライト

Nature 453, 7196

人の大規模な移動のマッピングは、都市開発計画や交通予報、伝染病予防などに重要である。野生動物の研究では、採餌の際の移動は、一連のランダムステップを数学的に表現したランダムウォークや、ランダムウォークの中に時折長距離ステップが挟まれるレヴィ・フライトによって説明可能であると考えられている。動物行動におけるレヴィ統計の役割については、News Featureで説明されているように異論も多いが(p.714)、こうした統計学理論を人間行動に拡張する考え方は、人間の移動をドル紙幣の動きにより追跡した際にみられるパターンが、レヴィ・フライトに類似したものであるという2006年の報告によって、力を得た。10万人の携帯電話利用者の移動軌跡を半年間にわたって追跡した今回の人間行動研究では、人の行動がレヴィ・パターンに類似しているものの、各個人の軌跡が時間・空間的に高度な規則性をもっているために、レヴィ・フライトのパターンから逸脱していることが明らかになった。仕事などの責務があることで、我々は餌を探しまわる野生動物ほどには自由にうろうろしていないらしい。しかし、個人差によるばらつきを補正すれば、単純で予測可能なパターンが人間の移動にもみられることがわかった。表紙写真は、ニューヨークのグランドセントラル駅での人々の動きを示している(Letter p.779, www.nature.com/podcast)。

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