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免疫:チンパンジーも「エイズ」にかかる

Nature 460, 7254

アフリカの霊長類に感染するサル免疫不全ウイルス(SIV)には40種以上が存在し、そのうち2つが種の壁を乗り越えて、ヒトでエイズウイルスHIV-1とHIV-2が生じた。今回、タンザニアのゴンベ国立公園で野生状態で生活しているチンパンジーについての包括的な自然史研究によって、HIV-1の前駆ウイルスであるSIVcpzに関する一般的な説、つまりすべてのSIVは自然宿主には病原性を示さないという広く受け入れられてきた考えが覆されることになった。9年以上にわたって94匹のチンパンジーを追跡調査した今回の研究によって、SIVcpz感染により、10倍以上の死亡リスク、出生率低下や進行性のCD4+ T細胞数減少といったエイズに似た徴候がチンパンジーでもみられることが明らかになったのである。これらの近縁のレトロウイルスが病気を引き起こす機序をヒトとチンパンジーとで比較すれば、HIV感染の予防や治療のための薬剤やワクチンの開発に関係のあるウイルス因子や宿主因子の同定が可能になるかもしれない。

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