Nature ハイライト

Cover Story:小さくなったプロトン:エキゾチック原子を使って新たに得られた半径は4%のカット

Nature 466, 7303

プロトンは、通常の物質すべてについて、原子よりも小さい基本的な構成要素であり、また単独では水素イオンH+として至るところに存在する。こうしたことを考えると意外とも思えるが、プロトンの構造と挙動に関する我々の知識には空白部分がまだいくつか残っている。プロトンの二乗平均平方根荷電半径を、現在の「最良の」値である1%という正確度を超える精度で決定するための共同プロジェクトの結果から、これらの空白部分は考えられていた以上に大きい可能性が示唆された。新たな値は、技術的に難しい分光学的実験、つまり、電子の仲間で電子よりも重いミュオンで電子を置き換えたエキゾチック原子である「ミュオン水素」におけるラムシフト(特定の一対のエネルギー状態のエネルギー差)の測定によって得られた。この結果は予想外のものであった。荷電半径が、以前の値よりほぼ4%小さくなったのである。この不一致についてはまだ説明がなされていないが、予想される影響としては、最も正確に決定された基本定数であるリュードベリ定数の値に修正の必要が出てくること、あるいは、量子電気力学理論の妥当性が疑わしくなることなどが挙げられる(Letter p.213, N&V p.195)。

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