Nature ハイライト

宇宙:KBO 55636を見直す

Nature 465, 7300

カイパーベルト天体(KBO)は氷を主成分とする小天体で、太陽系の海王星より遠くを周回しており、観測が難しい。星食を起こしているKBOが時折見つかり、そうした際には構造関連のデータが得られて、いくつかの性質が推測されることがある。しかし、水と氷が豊富なハウメア衝突天体族の仲間であるKBO 55636が関与した2009年10月9日の星食は、KBOの観測天文学を新たな段階へと導く大きな出来事だった。明るいKBOを数年間追跡した結果、間近に迫った食が予測できるようになり、多数の望遠鏡を食の起こる方向に向けることが可能になった。天気の急変などの観測上の障害が起きたにもかかわらず、別々の場所にある複数(実際は2基)の望遠鏡で観測が行われた。連動して得られた、視角の異なる2つの画像を使って、より正確な形状を算出したところ、KBO 55636の平均半径は143±5 km、幾何学的アルべドはVバンドで約0.9となった。これにより、この天体が従来考えられていたより小さく、その母天体のように反射率が非常に高いことが明らかになった。力学的年齢からは、KBO 55636では活発な表面更新機構が働いているか、あるいは、太陽系の外縁では新鮮な水氷が数十億年にわたって存在可能であることが示唆されている。

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