Nature ハイライト 進化:低速レーンに乗るタンパク質 2010年6月17日 Nature 465, 7300 タンパク質の進化がゆっくりとしか起こらないのは、アミノ酸置換はほとんどが有害となるので、機能を保存する方向に選択が働くためらしい。I PovolotskayaとF Kondrashovは、地球上のあらゆる生物の最終共通祖先(LUCA)に存在した、太古からあって現存しているタンパク質のアミノ酸配列が、太古から今までにどの程度ゆっくり分岐を続けているかを明らかにしようと試みた。計算は、エドウィン・ハッブルが宇宙における銀河の後退の研究で用いた手法を使って行われ、現存するタンパク質の配列は今でも互いに距離を広げつつある、すなわち共通の祖先から離れつつあることが示唆された。分岐の速度は非常に遅く、LUCAの時代以降の約35億年程度の年月では、配列分岐の限界に達するには不十分だった。これほど遅いのは、機能をもつタンパク質配列が「配列空間」内にまばらにしか存在しないことと、タンパク質の適応度地形に耐久性があることの結果である。つまり、任意の時点でアミノ酸の置換を受容できない部位は98%であるが、ほかの代償的な変化が起これば大多数の部位は最終的に進化が許容される可能性がある。 2010年6月17日号の Nature ハイライト 宇宙:KBO 55636を見直す 物性:磁気電気スカーミオン 物理:究極の波束制御法 地球:岩石に刻み込まれたアルカリ度 進化:低速レーンに乗るタンパク質 医学:全身性エリテマトーデスでコルチコステロイドの効果を増す 細胞:終止コドンがタンパク質生合成を終わらせる仕組み 目次へ戻る