Nature ハイライト

物理:原子の運動を観察する

Nature 468, 7325

小型のフェムト秒電子回折源が開発され、結晶性材料中の原子運動を観察する新しい手法として使われている。そして今回、材料中の電子密度の変調に周期的な格子歪みが伴っている、いわゆる電荷密度波材料1T–TaS2に、この手法が適用された。電子電荷密度波の動力学的性質はこれまでの時間分解研究によって明らかになっているが、格子系の動力学的性質のほうは間接的に推測するしかなかった。今回新たに行われた実験では、140フェムト秒光パルスに応答した原子の運動が観察され、周期的な格子歪みは極めて高速の時間スケール(約250フェムト秒)で崩壊することがわかった。これは、高度な協同性を有する、電子に駆動された過程であることを示している。観察された構造動力学における、電子系と格子系との間の予想外に高度な協同性は、強相関系の研究にこの手法が有望なことを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度