比較的大型の海洋性細胞や線虫(Caenorhabditis elegans)の細胞を使った1世紀にわたる研究に基づく、後生動物の細胞分裂についての教科書的モデルでは、有糸分裂紡錘体が分裂溝の位置を指示すると考えられている。ショウジョウバエ(Drosophila)の神経芽細胞のようなもっと小さい細胞の非対称分裂でも、このモデルで分裂溝の位置決定を十分説明できるかどうかが実験的に調べられ、このモデルでは十分ではないことが示唆された。代わりに、新規の経路が働き、Pins(partner of Inscuteable)極性複合体によって分裂溝の形成にかかわるタンパク質が基底側表層に集められ、そこでこれらのタンパク質が収縮環形成を誘導する。この紡錘体非依存的な細胞質分裂溝機構は、高度に極性化された有糸分裂細胞にも関与している可能性がある。