Nature ハイライト

進化:遺伝子操作で浮気な男が誠実な男に?

Nature 429, 6993

たった1個の遺伝子が、浮気なドンファンを誠実で家庭的な男に変えてくれるかもしれない。乱婚制のアメリカハタネズミ(Microtus pennsylvanicus)の雄に、性行動に関わる重要なホルモン受容体の遺伝子を多めに導入したところ、近縁のプレーリーハタネズミ(Microtus ochrogaster)に見られるように、一夫一妻制をとってマイホーム・パパになったという。 この2種のハタネズミは、分類上は非常に近縁だが行動に大きな違いがあり、ホルモンによる性行動や社会的行動の制御に関心をもつ研究者にはおなじみの動物である。哺乳類のうち、一夫一妻制でつがいの結びつきが強く、両親で子の世話をするものは5%にも満たない。プレーリーハタネズミはこの少数派に入る。プレーリーハタネズミの雄では、バソプレッシンというホルモンが前脳の腹側領域に働いて、「つがいの絆」の形成を支配していることや、一夫一妻制のハタネズミ種では、前脳腹側領域でのバソプレッシンV1a受容体の発現量が、乱婚制のハタネズミ種に比べて多いことがわかっている。 ただし、だからといってこの受容体の発現が一夫一妻制を支配しているというのは早計である。L J Youngたちはその実際の関係を検証するために、今回の研究を行った。そして彼らの報告では、ある型のV1a受容体遺伝子を乱婚制の雄アメリカハタネズミの前脳腹側領域に導入し、受容体の全体量を増すと、「つがいの絆」を作り上げる能力が実質的に高まったとしている。はるかに大きい既存の遺伝子回路や神経回路全体の中で、たった1個の遺伝子の発現だけで十分こういった変換をもたらすことができるのは、複雑な社会的行動が急速に進化する際にこうした仕組みが働いた可能性を示すものである。 齧歯類の恋愛事情についてはかなり解明されているようだが、ヒトの恋愛も同じような原理に支配されているのだろうか。この関連問題についてM KonnerがConceptsで取り組んでいる

目次へ戻る

プライバシーマーク制度