Nature ハイライト
医学:デング熱対策にボルバキアを使う
Nature 476, 7361
蚊が媒介するウイルス性疾患のデング熱は、熱帯および亜熱帯地方で大きな問題になってきている。主な媒介昆虫であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)の個体数の減少を狙ったこれまでの感染防止対策は、ほとんど効果が挙がっていない。今回、自然界で昆虫と共生する細菌のボルバキア(Wolbachia pipientis)を使って蚊の個体数を制御するという、これまでとは異なる方法に関する研究が2つ報告された。ボルバキアは細胞質不和合と呼ばれる過程によって、自己の感染を促進する。S O'Neillたちは、ショウジョウバエ由来のボルバキア株について述べており、これによって適応コストの負担をかけずに、蚊のデング熱ウイルス媒介を大幅に減らせることを報告している。同じ研究グループのもう1つの論文では、このボルバキアを定着させた蚊を放すと自然界の蚊個体群にボルバキアがうまく侵入することが、比較野外試験によって実証されている。これらの結果は、この方法がデング熱に対処する実行可能な戦略であることを示唆している。
2011年8月25日号の Nature ハイライト
発生:指先の再生には幹細胞が必要
構造生物学:重要な呼吸鎖タンパク質
宇宙:ブラックホールから誕生した相対論的ジェット
大気:CERNで調べるエアロゾル核形成
地球:ハワイ・プリュームの若い生成源
進化:哺乳類における初期の分岐の年代
医学:デング熱対策にボルバキアを使う
脳:ニューロン新生の抑制とうつ病との関係
生理:ピルビン酸輸送体はBASS2である