Nature ハイライト
生理:プロテアソームが幹細胞の寿命と結びついた
Nature 489, 7415
今週号のNatureでは、2つの論文が、寿命や幹細胞機能にプロテアソームが果たす役割について取り組んでいる。線虫(Caenorhabditis elegans)では、増殖している生殖系列細胞を除去すると寿命が延びるが、その理由として考えられる仕組みを1つ目の論文が明らかにしている。glp-1(e2141)変異体の線虫は生殖系列を持たず、資源を体細胞へ再分配しており、この浮いた資源を寿命の延長へ投資している可能性がある。また、これらの変異体では正常個体に比べてプロテアソーム活性が6倍に上昇し、損傷タンパク質の除去が亢進しており、それに付随して、19Sプロテアソームのrpn-6サブユニットおよびFOXO転写因子DAF-16の発現上昇が見られた。rpn-6を異所的に発現させるだけで、寿命を延長させ、タンパク質毒性ストレスから保護するのに十分であった。この結果は、老化に関連したタンパク質恒常性疾患における異常を、rpn-6によって正常化できる可能性を示唆している。2つ目の論文は、急速に分裂する幹細胞が高いプロテアソーム活性を持ち、損傷タンパク質を除去することでゲノムとプロテオームの完全性を守っている、という仮説に端を発している。ヒト胚性幹細胞は高い26S/30Sプロテアソーム活性を示し、この活性は分化を誘導すると低下することが明らかにされた。高いプロテアソーム活性は、19SサブユニットPSMD11/RPN-6の発現上昇と、インスリン/IGF-1応答性転写因子でありDAF-16オルソログであるFOXO4によるPSMD11/RPN-6発現の調節によっている。