Nature ハイライト
気候：メキシコ湾流の変化に起因するクラスレートの消失
Nature 490, 7421
クラスレートには莫大な量のメタンが蓄えられており、その大部分は浅い海洋大陸棚環境に存在する。クラスレートからメタンが突然放出されることで急激な気候動が起こる可能性があることが提案されており、暁新世/始新世境界温暖化極大期などの過去の温暖化事象を説明するために用いられてきた。現代の気候においては、特に海洋の温暖化が顕著な場合には、クラスレートの不安定化が起こりうる。今回B PhrampusとM Hornbachは地震データとモデル手法を用いて、アメリカ東部縁辺域に沿ったクラスレートの不安定化を明らかにしている。この不安定化はメキシコ湾流の温暖化か、その位置のわずかな変化と関連していると考えられる。しかし、どの程度の量のメタンが実際に大気へ流入するか明確でないため、クラスレートの不安定化により放出されるメタンが気候へ与える影響は不確かなままである。
