Nature ハイライト
細胞:腫瘍増殖とミトコンドリア機能障害
Nature 490, 7421
これまでの研究で、ショウジョウバエ(Drosophila)モデルでは、それぞれ異なる発がん性変異を持つ細胞のクローンが協働して腫瘍形成を促進する場合があることが示されている。今回、ショウジョウバエの成虫原基上皮系で、ミトコンドリアの機能障害を引き起こす変異が、活性化Rasがん遺伝子を発現する周辺細胞の腫瘍増殖も促進できることが明らかにされた。原因となる機構としては、JNKシグナル伝達の活性化とHippo腫瘍抑制経路の不活性化が関与している。ミトコンドリア機能障害は、活性酸素種の産生亢進を引き起こすこともあり、ヒトのがんに関与すると考えられている。このような異常が、細胞自律的でないやり方で腫瘍形成を促進できることは、ヒトがん細胞クローンの進化や、広く見られる腫瘍内不均一性の基盤を解明する手がかりになるかもしれない。