Nature ハイライト

医学:自閉症スペクトラム障害の治療標的

Nature 493, 7432

自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因の1つはタンパク質合成の異常であると考えられているが、どの経路が破壊されているのかという詳細はよくわかっていない。だが、翻訳開始に重要な因子であるeIF4Eの破壊は、ヒトの自閉症との関連が明らかになっている。そして今回、別々に行われた2つの研究によって、過剰なキャップ依存性翻訳がマウスでシナプスの欠陥とASDに似た行動異常に関係することが示された。N Sonenbergたちは、eIF4Eの抑制因子である4E-BP2を持たないマウスでは、自閉症に強く関係するとされているシナプスタンパク質ニューロリギンの翻訳が増加していることを明らかにした。このマウスではASD様行動と海馬のシナプス活性の変化も見られるが、eIF4E活性やニューロリギン1のレベルを正常化してやると、こうした症状が回復する。一方、E Klannたちは、eIF4Eを過剰に発現するマウスでもASDに似た行動や、海馬、前頭前皮質および線条体のシナプス活性の変化が見られることと、これらの表現型の一部がキャップ依存性翻訳の阻害因子4EGI-1によって救済されることを突き止めている。これら2つの研究で同じような結果が得られたことは、キャップ依存性翻訳がASDに似た症状の治療標的になる可能性を示している。

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