Nature ハイライト

Cover Story:がん幹細胞の機能:白血病幹細胞と血液幹細 胞をPten で区別する

Nature 441, 7092

がんを発症させて維持する幹細胞は、正常な幹細胞とよく似ているため、がん細胞だけを特異的に標的とする薬剤を設計するのはむずかしい。だが例えば、白血病治療の際に血液幹細胞が損傷を受けると造血不全や死につながることもあることから、深刻な問題である。今回、白血病などのがんで不活化されていることが多いPTENという腫瘍抑制因子に関する研究から、正常な幹細胞とがん幹細胞の自己複製における重要な違いが的確に示された。PTENは通常、ホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼのシグナル伝達経路を阻害し、細胞の増殖や生存を制限している。PTENがないと、白血病性幹細胞は増殖するが、正常な幹細胞は激減する。このことから、PTEN様の作用をもつ薬剤は抗白血病作用をもつが、血液幹細胞は維持される可能性があると考えられる。実際、Pten欠損マウスでは、ラパマイシンによって白血病性幹細胞が死滅するが、正常な幹細胞機能は回復することがわかった。また、別の研究により、血液幹細胞の調節におけるPTENの役割が確認された。[Article p.475; Letter p.518; News and Views p.418]

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