細胞の老化とは成長を停止させるプログラムで、哺乳類細胞のあらかじめ長さの定められた一生を終わらせ、そうすることで細胞の際限のない増殖を防ぐと考えられている。癌の抑制とも関連があるため、この細胞の老化には大きな関心が集まっている。今週号に掲載されている4編の論文では、細胞の老化がin vivoで実際に誘導され、癌を引き起こす遺伝子にブレーキをかけることが示された。 C Schmittのグループは、骨髄の血液形成細胞で癌遺伝子Rasが活性化されているマウスモデルを使って、細胞の老化がリンパ腫の発生を阻止することを明らかにした。この研究は、腫瘍の発生過程の解明だけでなく、腫瘍の治療にも重要な意味をもつと考えられる。 P P Pandolfiたちは、老化が癌抑制因子p53の力を借りて、マウスの前立腺癌の発生を防ぐ仕組みを解明した。また、D Peeperたちのグループは、母斑が長年にわたって良性に保たれるのは細胞周期の停止のためで、それがないと悪性黒色腫に進行することを発見した。 さらにM SerranoたちはBrief Communicationsで、前癌状態にこのような細胞の成長停止がみられることを明らかにし、細胞の老化に関連する新しいマーカーを同定している。「この研究で待望の老化マーカーが見つかり、この重要な癌抑制過程の分子基盤が解明された。」とN SharplessとR DePinhoがNews and Viewsで述べている。