Nature ハイライト

医学:抗体を理解する

Nature 437, 7059

西ナイルウイルスがしっかりと根をおろす前に細胞レベルで侵入を阻止する抗体についての報告が寄せられている。この抗体は、ウイルスが細胞の表面に付着した後でウイルスに結合して感染を阻害するが、研究者たちはその仕組みを調べた。この結果は、日本脳炎ウイルスや黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスなどといった類似のウイルスに対するワクチンの開発にも役立つ可能性がある。デング熱ウイルスの感染者は毎年5000万人にものぼるが、まだ認可されたワクチンはない。  西ナイルウイルスは鳥の病原体だが、1999年に初めて米国で報告されて以来、ヒトへの感染は1万6000例以上にのぼり、死者は650人を超えている。西ナイルウイルスはフラビウイルスの一種なので、今回の知見は、他のフラビウイルス(中には、ヒトにとって西ナイルウイルス以上に有害なものもある)に対するワクチンの開発にも役立ちそうだ。  D Fremontたちは今回、ウイルスの表面タンパク質の1つのアミノ酸と抗体E16との相互作用について詳しく調べた。E16はウイルスが宿主細胞の表面に付着するまで待ってから、巧妙に融合過程を妨げることがわかった。ウイルスが引き金となって起こる宿主細胞の構造変化を阻害するのである。これまで、防御的に働く抗体は単にウイルスの最初の付着を阻害すると考えられていたが、今回の研究で、E16はウイルスの細胞への侵入方法に関係なく感染を阻止できることが明らかになった。このため、E16はワクチン設計戦略改良の鍵となる候補になりそうだ。

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