Nature ハイライト 物理:非常に薄いグラファイトは量子力学上の謎である 2005年11月10日 Nature 438, 7065 わずか原子1個分の厚さしかないグラファイトシート中の電子の特異なふるまいから、今まで見られなかった量子力学的な効果が明らかになった。この知見はマイクロエレクトロニクスへの応用が期待できる。 A GeimとP Kimにそれぞれ率いられた2つのグループは、導電性物質中を移動する電子が、非常に薄いスラブ、あるいは膜という2次元の「平面世界」に閉じ込められる際に見せる特異なふるまいについて研究を行った。 このようなふるまいは、金属薄膜では何年も前から知られていた。しかし、2つのチームが発見したように、グラファイトでのふるまいはそれとは異なる。彼らは顕微鏡法と顕微操作技術を使って、通常のグラファイトでは重なって層状になっている炭素原子のシートを1枚ずつに分離した。これらの層は、層全体を自由に行き来する電子を含んでいるため、導電性になる。しかし、グラフェンと呼ばれるグラファイトの単一層では電子のふるまいが2次元金属とは異なることがわかった。 グラフェンシートでは、例えば可動電子がシート中にまったく存在しないような場合でも、導電率はある極小値より低くならない。Geimたちは、電流が通常の電子によって運ばれるのではなく、光子のような静止しているときの質量がまったくない荷電粒子によって運ばれるかのように、グラフェンがふるまうと指摘している。このような性質から、グラフェンは電子の特異な量子力学的なふるまいを調べるための非常におもしろい材料といえる。 2005年11月10日号の Nature ハイライト 進化:用いよ、さもなくば失わん 地球:地震は始まったときにその最終的な力が予測できる 生理:ショウジョウバエの時計をリセットする 進化:島移住の「飛び石」説に一石を投じる 物理:非常に薄いグラファイトは量子力学上の謎である 化学:「バイオディーゼル」を生成する効率のよい触媒 : 目次へ戻る