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免疫:糖尿病の自己免疫応答の引き金はインスリン

Nature 435, 7039

1型糖尿病は、米国では子供や若者の400から500人に1人の割合で見られる病気だが、何が原因で体が自身を攻撃するようになるのかを解明しようと、研究者たちは長い間、悪戦苦闘してきた。この病気では、血糖を制御するホルモンであるインスリンを生産するはずの膵臓細胞を、免疫系が破壊してしまう。今回、インスリン自体がこの破壊的な自己免疫応答を誘導することをはっきり示す証拠が2つ報告された。  G Eisenbarthたちは、普通ならば1型糖尿病を発症するマウスを遺伝子操作して、正常なインスリンを欠失させたが、マウスが死んでしまわないように、ホルモン活性はもつが免疫細胞に認識されないインスリンを生産するようにした。この変異インスリンをもつマウスは、糖尿病を発症しなかった。  D Haflerたちの得た結果は、ヒトの自己免疫応答にもインスリンが重要な役割を担っていることを裏付けるものである。Haflerたちは1型糖尿病患者の膵臓の領域リンパ節から免疫細胞を単離し、これらの細胞が認識するタンパク質を調べた。健康な個体の免疫細胞とは対照的に、糖尿病患者から単離した細胞は、半数がインスリンと反応することがわかった。  これらの知見が示すように、ヒトの自己免疫応答の標的はインスリンであると考えられ、このことから治療法が見つかるかもしれないと、M von HerrathがNews and Viewsで述べている。

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