Nature ハイライト 惑星:再考を迫られる火星の磁場 2005年5月12日 Nature 435, 7039 火星の隕石クレーターの磁場測定から、この赤い惑星にはかつて非常に弱い磁場しか存在しなかったと考えられてきた。ところが今週号で報告された研究によると、この考えは誤りなのかもしれない。 火星の衝突盆地であるヘラスとアルギレの岩石は、35億年から40億年前に火星に衝突した隕石の影響を受けた。火星を周回する探査機マーズグローバルサーベイヤーは、これらの岩石が非常に弱くしか磁化していないように見えることを発見したが、このことは、衝突が起きたときの火星の磁場が非常に弱かったことを示唆している。 今回S Gilderたちは、南アフリカにある20億年前のブレデフォート衝突クレーターの岩石が上空から見ると全体としては弱く磁化しているとしか見えないにもかかわらず、強く磁化していることを発見した。これは、岩石の磁場がばらばらな方向を向いていて、遠くからでは互いに相殺した結果が見えるからである。「火星の衝突クレーター中の岩石の磁気ベクトルの向きが数キロメートル以下の距離でばらついているならば、人工衛星の高さから見ると、クレーター全体では磁化されていないように見えるだろう」と、D DunlopがNews and Viewsで述べている。 この発見によって、火星全体が全球的な磁場で保護されていた時期についての考えを再検討せざるをえなくなるかもしれない。 2005年5月12日号の Nature ハイライト 免疫:糖尿病の自己免疫応答の引き金はインスリン 発生:レチノイン酸が胚発生にかかわる経路を結びつける 惑星:再考を迫られる火星の磁場 動物行動:実証されたミツバチの尻振りダンス バイオメカニクス:柔らかい生体組織が強くなる : 目次へ戻る