Nature ハイライト

Cover Story:型にはまった性:ゾウリムシで見られるEとOという接合型はどのようにして遺伝するのか

Nature 509, 7501

表紙は、接合中のゾウリムシ(Paramecium)の共焦点顕微鏡による画像である。接合型がO型の細胞は変形していて、蛍光標識を付けた繊毛タンパク質(黄色)を発現しており、O型とE型の細胞はどちらもTAP952抗モノグリシル化チューブリン抗体(赤色)で染色されている。原生動物のゾウリムシは典型的な繊毛虫として広く研究されており、多くの場合は二分裂によって無性的に増殖するが、特定の条件下では有性生殖を行う。EとOという2つの接合型は1937年に発見されたが、接合型が母系遺伝することの分子基盤が今回やっと解明された。E Meyerたちは、ヨツヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)を使って、発生・成長の間にE接合型は膜貫通タンパク質mtAの発現に依存して決定され、デフォルトであるO接合型はmtAプロモーターがscnRNAにより除去されることによって決定されることを示した。scnRNAは「スキャン」を行う低分子RNAの1種であり、有性生殖の間に転移因子を認識して切り出すことによって、ゾウリムシゲノムを再プログラム化する。同胞種のP. septaureliaでは、これと同じような切り替え機構が独立に進化しており、こちらには別の遺伝子mtBが関わっている。このことから、scRNA経路のイグザプテーション(外適応)は、ゾウリムシでの分化状態の継代的なエピジェネティック遺伝に関する一般的な機構である可能性が考えられる。(Article p.447; N&V p.430)

目次へ戻る

プライバシーマーク制度