Nature ハイライト

医学:肥満を招く酵素

Nature 431, 7005

肥満と2型糖尿病の関連については関心が高まっており、豊かな社会では特にその傾向が強い。今回G Thomasたちは、食餌、空腹、インスリン代謝を結びつけている複雑な鎖の輪の1つを研究した。その輪とはS6キナーゼ1(S6K1)と呼ばれる酵素で、この酵素をもたないマウスは、グルコース不耐性などの糖尿病関連症状を示すにもかかわらず、インスリン感受性がきわめて高く、空腹時血糖値も正常であることが最近明らかにされた。このような一見不可思議な症状の取り合わせに興味を持ったThomasたちは、さらにつっこんだ研究を行い、この極端なインスリン感受性のおかげでS6K1欠損マウスが肥満しないことを明らかにした。インスリンの作用に対する耐性の上昇は成熟と老化にともなう正常な現象と考えられることから、少なくともヒトでは、2型糖尿病が中高年に特有な病気である理由をこれで説明できる。S6K1は通常、このインスリン耐性の過程にかかわっていて、飽食状態のときに体のインスリン感受性を鈍らせる。しかしS6K1欠損マウスは、インスリンに対して子どものころと同様の感受性を保つため、肥満しにくいことになる。

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