Nature ハイライト

気候:オーロラの国から最深記録

Nature 431, 7005

過去数十万年にわたる気候変動について最近得られた知見の多くは、南極大陸とグリーンランドの古代の氷から掘削したコアがもたらしたものである。氷がゆっくりと堆積していって層が乱れなかったため、数万年にも及ぶ全球的な気候事象の記録を、ほぼ1年の単位で追跡できる。1990年代にグリーンランド中央部から掘削された2つの深層氷床コアは、北半球の気候再現において鍵となる役割を果たしてきた。しかし、岩盤の近くで氷が崩れて重なったため、コアの最も深くて古い部分から読み取った編年記録は不確定であった。この深いところでの乱れは、研究の進展をかなり妨げてきた。今回、D Dahl-Jensenたちは、グリーンランド北部の、年層が乱れていない氷床コアからの気候記録を報告している。 この新しいコアの記録は、最終氷期を越えて気候が今日よりも相当暖かかった最終間氷期(123,000年前)までもさかのぼる。当時の気候は、イギリスのヨークシャー地方くらい北の地域でもカバが泥のなかで転げ回って暮らし、現在のロンドン市内ではライオンが獲物に忍び寄っていたくらいの温暖さだった。 今回の新しいコアと中部グリーンランドから以前得られたコアとの差異は、最終氷期における気候変動の特徴を示している。北部グリーンランドの気候記録は、最終氷期の始まりを特徴づける、温度のゆっくりとした低下を示す。そして最も意外な発見は、氷期の条件が完全に整う以前、およそ115,000年前の突然の気候温暖化によって始まった、これまで知られていなかった温暖な時期の存在である。南極の氷床コアでは、この温暖期に直接対応するものは見られない。このことは、(最終氷期を支配していた)半球の間の気候「シーソー」がこの時には働いていなかったということを示唆している。

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