Nature ハイライト 生化学:線虫を眠らすフェロモンの構造 2005年2月3日 Nature 433, 7025 周囲の環境が過酷になると、線虫Caenorhabditis elegansは眠ってしまう。これを科学的に言えば、「老化が停止したdauer幼虫になることにより、飢餓や過密といった状況に対応する」ということになる。dauer幼虫化には、あるフェロモンが関与することが知られていたが、その化学的性質はこれまで不明であった。今回、dauer期を誘導するdaumoneというフェロモンの化学構造が明らかにされた。Y-K Paikたちは、大規模精製を行ってこのフェロモンを単離し、これが脂肪酸誘導体であることを明らかにした。化学構造が明らかになったことで、老化防止フェロモンの作用機構の解明に一歩近づいたことになる。今回得られた知見は、動物や植物の寄生生物駆除薬の開発に役立つだろう。またdaumoneが線虫の寿命に影響を与える可能性があることに加えて、dauer幼虫化の制御にはインスリン様シグナル伝達経がかかわっていると考えられる。このシグナル伝達に関する情報を利用すれば、肥満治療における大きな進展につながるかもしれない。 2005年2月3日号の Nature ハイライト 遺伝:新たな探査で失われた遺伝子を発見 宇宙:見えない宇宙の質量の発見 生理:昆虫は酸素の毒性を避けるため息を止める 生化学:線虫を眠らすフェロモンの構造 ナノテクノロジー:カーボンナノペーパー : 目次へ戻る