Nature ハイライト

環境:新たな研究でマグロ資源の減少に歯止め

Nature 434, 7037

電子タグ装着技術によって大西洋クロマグロ(Thunnus thynnus)の回遊や産卵の海域が観察できるようになり、きわめて包括性の高いデータが得られた。今回の報告は、マグロ資源の今後の管理や個体数の回復に役立つ情報源となるだろう。 海洋生態系の頂点に位置するクロマグロなどの捕食者は、乱獲のせいで世界的に激減しており、1970年以降、西大西洋クロマグロの産卵資源バイオマスは80%以上も減少してしまった。クロマグロは巨大なものになると650 kgを超えることもあり、内温性(主として代謝熱によって体温を維持する性質)を備えていることや心血管系の生理的特性から、亜北極圏の採餌海域から亜熱帯の産卵海まで幅広い環境で生活することができる。 今回の研究で、B Blockたちは西大西洋で772匹の大西洋クロマグロに電子タグを取りつけた。得られた測位データから、2つの個体群が存在することがわかった。1つはメキシコ湾に産卵海域があり、もう1つは地中海に産卵海域がある。 研究チームは、今回のデータをもとに、いくつかの資源管理策を提案している。2群のクロマグロ資源はどちらも北大西洋の採餌海域を利用しているが、2つの主要な産卵海域の間を互いに移動している証拠は存在しない。Blockたちによれば、米国国内で延縄漁の時期と海域を制限すれば、西大西洋の産卵海域で混獲によって死ぬマグロの数を最小限に抑えられるという。しかし、残る大西洋クロマグロ資源のさらなる減少を防ぐには、大西洋マグロ類保全国際委員会(ICCAT)によるこれまで以上の働きかけが必要だろうと著者たちは述べている。

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