嚢胞性繊維症患者の肺には病原性の緑膿菌が群居していることが多く、この感染の治療は非常に困難なことがある。この菌の抗生物質耐性は、防護壁となる糖マトリックスであるバイオフィルムに取り囲まれた集団として増殖する性質と関連しているらしい。このように包まれた細菌細胞は、遊離生活をしている場合に比べると抗生物質耐性が最大で1000倍にも達する。しかし、新たに単離された緑膿菌変異体の性質についての報告で、G A O'Tooleたちはバイオフィルムは単に拡散障壁となっているだけではないと考えている。ここで変異を起こした遺伝子はグルカン合成に関わるもので、グルカンは抗生物質トブラマイシンに特異的に結合して、この抗生物質が作用部位に到達できないようにバイオフィルムの内側で抑え込んでしまう。このことは、抗生物質とバイオフィルムに特異的なグルカンを標的とする化合物とを併用する治療法ならば、抗生物質耐性にうち勝つのに役立つ可能性があることを示している。