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気候:火山とエルニーニョの熱い関係

Nature 426, 6964

大規模な火山噴火は、大量の塵や温室効果ガスを大気中にまき散らすことで、地球の気候に影響を及ぼすことがあるようだ。J B Adamsたちは、熱帯における火山噴火により、次の冬の発生確率が倍になる可能性があると考えている。この知見は、天気予報だけでなく、人間が及ぼす影響に対する地球気候システムの反応を予測するのにも役立つ。 3〜11年毎に繰り返し発生するエルニーニョは気候の自然振動であり、世界のある地域には日照りを、また他の地域には大雨をもたらす。エルニーニョが始まる際には、熱帯太平洋西部の海面温度が例年と比べて必ず上昇する。火山の噴火が気候に及ぼす影響は、このような変化の引き金となる可能性がある。その関係を調べるためにAdamsたちは、17世紀中期以降の火山活動とエルニーニョの記録を比較してみた。 火山の噴火は歴史的に記録されているだけでなく、極地の氷に閉じこめられた塵を調べることからも明らかになる。エルニーニョはまた文献に記載されているほか、樹木の年輪、サンゴの成長環、氷床コアなどの、さまざまな地質学的な気候指標から読みとることができる。Adamsたちは、これらの記録の統計的比較から、熱帯地方における火山の噴火後には、エルニーニョが偶然とは言えないほど著しく増えていると考えた。火山の噴火により、成層圏下層で塵がまき散らされ、これが太陽光線を反射して冷却効果をもたらすようだ。やや直感には反するが、大気と海洋の複雑な相互作用が、この効果を熱帯海洋温度の上昇に変換して、エルニーニョが起きやすくなる状況が生み出される。

News and ViewsではS de Silvaが、エルニーニョと火山活動の統計的な関連性をさらに詳しく明らかにすることは「かなり困難だろう」と述べている。

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