ある種の植物は、長く寒い冬を過ごさないと花が咲かない。今週号に掲載された2つの論文によって、この過程を制御する遺伝子の働く仕組みが少しずつわかってきた。寒さにあわない場合、開花はタンパク質FLCによって妨げられているのだが、厳しい寒さはこの障害をとり除くらしい。S SungとR M Amasinoは、VIN3と呼ばれる遺伝子が、FLCの作用を抑えるために特に必要なことを報告している。VIN3は、事実上冬になったかどうかを判断して、低温に長期間おかれる場合にのみ誘導される。一方、C Deanたちは、別の2つの遺伝子VRN1とVRN2に注目した。これらの遺伝子が働かなくなった植物では、低温になるとFLCの生産を止めることはできるのだが、周囲が暖かくなるとFLCの濃度が回復し、開花は再び阻害されてしまう。一般にはずっと以前から利用されているこの性質について、植物学的には今になってやっと解明が始まったところだ。しかし、植物栽培をする人たちの方は一部の植物について、開花を早めさせるのに人工的に冷気に曝すというおまじないをごく普通に使っているのである。