Nature ハイライト
Cover Story:分子の制御:有機化学合成の規則を破る触媒的置換反応
Nature 556, 7702
異なる4つの炭素置換基と結合した炭素、つまり第四級立体中心は、生物活性を示す有機小分子の重要な構造モチーフである。こうした分子は、異なる鏡像を持つことがあり、適切な立体配置の分子のみを合成することが難しい場合がある。今回E Jacobsenたちは、通常は制御できない反応機構を使って、どのようにしてラセミ混合物から第四級立体中心を選択的に生成したか明らかにしている。この一分子求核置換(SN1)反応は、有機化学のどの教科書にも載っている。この反応では、平面状のカチオン中間体(表紙イラスト)を介して、すでにある炭素原子の置換基を求核置換基で置き換えることが可能になる。しかしこの機構には、面のどちらの側からも反応性の炭素原子が近づくことができるという性質があり、求核置換基を選択的に付加することは通常は不可能である。著者たちは、水素結合するキラルな触媒とルイス酸を用いて、この規則を破り、SN1反応の立体制御された進行を実現した。
2018年4月26日号の Nature ハイライト
生物工学:大腸がん細胞の多様化
腫瘍生物学:がん細胞におけるEMTと転移
量子物理学:エンタングルメントのスケールアップ
地球科学:余震が地球の下部地殻に及ぼす衝撃的効果
気候変動生態学:白化したグレートバリアリーフのその後
免疫学:炎症経路における求電子性のイタコン酸
神経科学:エネルギーバランスにおけるレプチンの役割の背後にある脳回路
構造生物学:NMDA受容体の働きを遮断する
構造生物学:NPY受容体の構造