Nature ハイライト
Cover Story:ジアゼパムの標的:GABAA受容体の構造から抗不安薬の結合部位が明らかになった
Nature 559, 7712
脳における速い抑制性神経伝達は主に神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)と、そのシナプス標的であるA型GABA受容体(GABAA受容体)によって媒介される。こうした受容体は、中枢神経系の心理学的な活動に重要な役割を果たしており、その機能障害によって、てんかん、不安、不眠などの異常が生じることがある。さらに、GABAA受容体は、バルビツール酸系薬、麻酔薬、アルコール、ベンゾジアゼピン系薬のジアゼパム(セルシン/ホリゾン)やアルプラゾラム(ソラナックス/コンスタン)を含むさまざまな治療薬の標的でもある。今回R Hibbsたちは、脳におけるこの受容体の主要なアイソフォームの構造を報告している。彼らは、クライオ(極低温)電子顕微鏡法を用いて、ベンゾジアゼピン系薬過剰摂取の解毒剤であるフルマゼニルとGABAに結合したヒトα1β2γ2 GABAA受容体の構造を解いた。表紙は、このヘテロ受容体の各サブユニットを異なる色で表したもので、青緑色の球は結合した薬剤である。著者たちは、この受容体がベンゾジアゼピン系薬の影響を受けることを示し、受容体のタンパク質サブユニットの間の界面にある部位が薬剤開発の標的となる可能性を明らかにしている。
2018年7月5日号の Nature ハイライト
細胞生物学:アクチンが握るDNA修復のカギ
天文学:また1つ検証をパスした一般相対性理論
化学:二重触媒法によるsp3 C–Nアルキル化
地球科学:侵食速度と寒冷な気候の関連性の再調査
神経科学:ニューロンを作ってストレスと戦う
発生生物学:皮下脂肪で脂肪生成を制御する細胞
寄生虫感染症:腸の損傷後に起こる胎仔の発生プログラムの再活性化
炎症:免疫麻痺におけるマイクロRNAの役割
細胞生物学:対立する酵素が協働するとき
がん治療:急性骨髄性白血病で獲得抵抗性が生じる機構
構造生物学:三日熱マラリア原虫の侵入複合体の構造