Nature ハイライト
物性物理学:垂直熱電発電
Nature 581, 7806
熱電材料は、熱流を電気エネルギーに変換するので、エネルギーハーベスティングや熱センシングに応用するためのカギとなる。通常そうした技術はゼーベック効果に基づいているが、強磁性材料でこれに対応する「異常ネルンスト効果」と呼ばれる垂直熱電効果は、温度差に対して垂直に発電するという幾何学的な特徴があるため大面積化できると考えられ、さまざまな利点をもたらす可能性がある。しかし、一般に異常ネルンスト効果はゼーベック効果よりもはるかに小さく、可能な応用は限られている。今回、中辻知(東京大学)たちは、電子的特性のトポロジー的側面を探るハイスループット計算による物質探索を指針として、室温において特定の鉄系立方晶化合物の薄膜で大きな異常ネルンスト効果を実証している。今回の結果は、低コストのフレキシブル熱電変換デバイスの設計への道を開く可能性がある。
2020年5月7日号の Nature ハイライト
原子物理学:パイ中間子ヘリウム原子
精密測定:多価イオンの重さを測る
ナノスケール材料:2層グラフェンにおけるねじれ角の変動の画像化
物性物理学:垂直熱電発電
流体力学:固体壁を用いずに流れを導く
神経変性:APOE4は早期のBBB崩壊と認知機能低下の原因となる
神経科学:軸索再生におけるハンチンチン遺伝子の役割
幹細胞:再プログラム化によって光受容器を置換する
植物科学:siRNAと植物のストレス応答
疫学:小児期の予防接種が抗生物質消費量に及ぼす影響
膵臓がん:膵臓がんでは、オートファジーを介する機構により腫瘍が免疫を回避する