Nature ハイライト
コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクタンパク質のin situ構造
Nature 588, 7838
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の細胞への侵入は、そのウイルス粒子を取り囲む脂質二重層から突き出たスパイクタンパク質三量体によって仲介される。これらのスパイクタンパク質は、細胞受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合して、ウイルス膜と細胞膜の融合を駆動する。スパイクタンパク質はまた、ワクチンの標的でもあり、従って、ウイルス粒子表面でのスパイクタンパク質の構造を理解することは重要である。これまでの構造研究では精製スパイクタンパク質が調べられてきたが、今回J Briggsたちは、ウイルス粒子表面上のスパイクタンパク質三量体のin situ構造を報告している。意外にも、この三量体は、開いた状態と閉じた状態の両方の融合前コンホメーションで存在していて、三量体のごく一部は融合後コンフォメーションでも存在するようである。これらの知見は、感染時やワクチン接種時におけるスパイクタンパク質と中和抗体との相互作用の理解に関係し、ワクチン設計のための情報をもたらすだろう。
2020年12月17日号の Nature ハイライト
精密測定:光ピンセット原子時計を目指して
精密測定:エンタングルメントによる時間測定の改善
高分子化学:分子のパッチワークを織り上げる
水文学:ヨーロッパの川を寸断する100万を超える障壁の広大なネットワーク
生態学:人工物の質量が生物量を上回る
遺伝学:ヒト心臓の単一細胞アトラス
免疫学:改変型モノクローナル抗体によるFcRを介した防御性CD8+ T細胞応答の増強
コロナウイルス:SARS-CoV-2スパイクタンパク質のin situ構造
生化学:多サブユニットタンパク質複合体が進化の長い時間にわたって維持される訳
構造生物学:不活性なミオシンモーター