Nature ハイライト
代謝:熱産生に糖代謝を利用するベージュ脂肪
Nature 565, 7738
使っていない脂質を蓄積する白色脂肪組織とは異なり、褐色脂肪やベージュ脂肪は、低温曝露に応答して脂質を代謝し、熱を産生する。この熱産生の大部分は、β3-アドレナリン受容体シグナル伝達を介して行われる。梶村真吾(米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校)たちは今回、新たなタイプのベージュ脂肪の発見について報告している。このベージュ脂肪は筋原性の前駆細胞集団に由来し、通常、脂肪の熱産生に重要な経路であるβ-アドレナリン受容体シグナル伝達がなくても低温順化の間に形成され、脂肪酸酸化よりもグルコースの使用を優先して熱産生を行う。転写因子のGA結合タンパク質αが、筋原細胞からこの糖代謝性ベージュ脂肪を分化させる重要なドライバーの1つであることが分かった。糖代謝性ベージュ脂肪を喪失させたマウスは低体温症になったため、糖代謝性ベージュ脂肪の機能は低温ストレス下での生存に必要であることが実証された。抗肥満や抗糖尿病の治療手法の標的として、熱産生脂肪に関心が集まっており、今回見つかった熱産生脂肪の新たなサブタイプは、新たな治療標的として有望である。
2019年1月10日号の Nature ハイライト
物性物理学:量子ホール物質のトポロジカル不変量測定
代謝:熱産生に糖代謝を利用するベージュ脂肪
計算生化学:治療用タンパク質をde novoに設計する方法の改良
恒星進化:白色矮星のコアの結晶化
系外惑星:回転軸の傾きがそろっていない原始惑星系円盤
地球科学:音波速度測定によって明らかになった下部マントルの玄武岩質地殻
古気候学:ゆりかごを揺らす気候
微生物遺伝学:イエメンでのコレラのエピデミックを追跡する
免疫療法:グリオブラストーマ患者での臨床試験におけるネオアンチゲンワクチンの応答
免疫療法:グリオブラストーマ患者のための個別化ワクチン
神経免疫学:脳卒中からの回復における制御性T細胞の役割