Nature ハイライト
心血管生物学:IDO1が一重項酸素分子を介して血管の弛緩を調節する
Nature 566, 7745
血管の炎症は、動脈内皮細胞を刺激してインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を発現させる。この酵素はトリプトファンのN-ホルミルキヌレニンへの酸化に関与し、N-ホルミルキヌレニンはその後キヌレニンへと変換される。血管径の調節におけるIDOの役割には、このキヌレニンが介在すると考えられてきた。しかし今回C Stanleyたちは、キヌレニンが血管径を調節していないことを明らかにし、さらに、IDO1が一重項酸素分子(1O2)の形成にも関与しており、この1O2が続いて内皮細胞でL-トリプトファンをシス-ヒドロペルオキシド(cis-WOOH)へと変換するという予想外の知見を得た。cis-WOOHは次に血管平滑筋細胞にシグナルを出し、PKG1αの酸化還元二量体化とそれに続くプロテインキナーゼG1αのリン酸化を引き起こし、その結果、血管が弛緩する。この機序は、健康なマウスでは働かないが、血管に炎症のあるマウス、アテローム性動脈硬化や心臓の圧負荷などの病的状態のあるマウスでの血圧調節に重要な役割を果たしている。
2019年2月28日号の Nature ハイライト
物性物理学:トポロジカル物質のカタログ
発生生物学:発生中のマウスについての単一細胞アトラス
発生生物学:マウスの発生における細胞アトラス
医学研究:多発性硬化症におけるCNS灰白質の炎症
量子物理学:連続変数を符号化する決定論的エンタングリングゲート
量子物理学:量子誤り訂正のための連続変数符号化
物性物理学:「弱い」トポロジカル絶縁体
心血管生物学:IDO1が一重項酸素分子を介して血管の弛緩を調節する
医学研究:転移の付き添いサービス