代謝:寒い季節の妊娠で生まれた人は褐色脂肪組織の活動が活発になるかもしれない
Nature Metabolism
2025年4月8日
寒い季節の妊娠で生まれた人は、暖かい季節の妊娠で生まれた人に比べて、褐色脂肪組織の活動が活発で、エネルギー消費量が多く、BMI(body mass index)が低く、内臓周辺の脂肪蓄積が少ない傾向にあることを報告する論文が、Nature Metabolism に掲載される。500人以上の被験者を対象とした分析に基づくこの研究結果は、気象条件が人間の生理機能に影響を与える可能性を示唆している。
脂肪減少の主な指標となるのは食習慣と運動であるが、寒暖の影響も一因となる。気温が低いと、褐色脂肪組織の活動により体内でより多くの熱が生成され(寒冷誘導性熱産生)、白色脂肪組織の脂肪蓄積量が減少する。しかし、褐色脂肪組織の活動における個人差を生む根本的要因については、特に人間においてはまだ十分に解明されていない。
米代 武司らは、日本で3歳から78歳の683人の健康な男女を対象に、褐色脂肪組織の密度、活動、および熱産生を分析した。これらの参加者の親は、受精と出生の期間中に寒い気温(研究では10月17日から4月15日と定義)または暑い気温(4月16日から10月16日)にさらされていた。寒い季節の妊娠で生まれた個体は、褐色脂肪組織の活性が高く、エネルギー消費量、熱産生、内臓脂肪の蓄積、および成人期のBMIが低いことが分かった。さらに詳しく言うと、米代らは、人間の子供における褐色脂肪組織の活性を決定する主な要因は、妊娠前の期間における日中の気温の変化が大きく、周囲温度が低いことであることを示している。
著者らは、その根本的なメカニズム、異なる集団への適用可能性、および乳児期に起こるものも含めた他の食事や環境の変化の影響を明らかにするには、さらなる研究が必要であると指摘している。
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- Published: 07 April 2025
Yoneshiro, T., Matsushita, M., Fuse-Hamaoka, S. et al. Pre-fertilization-origin preservation of brown fat-mediated energy expenditure in humans. Nat Metab (2025). https://doi.org/10.1038/s42255-025-01249-2
doi:10.1038/s42255-025-01249-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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